新型コロナウイルス感染の拡大防止の一助にしようと、ジャカルタ市内に設置された仮設の殺菌室(写真:AP/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚 智彦)

 新型コロナウイルスへの官民をあげての緊急対応が続く東南アジアの大国・インドネシア。3月25日正午の時点で感染者数は790人、死者は58人になった。

 これは世界第4位、約2億6000万人のインドシナの人口からすれば790人という感染者数はごく少数とも言えるが、3月2日の初のインドネシア人の国内での感染確認(2人)以来、急激な増加傾向を示しており、死者数も感染者拡大に従って増え続けていることから、不安が広がっている。

 さらに注目すべきは感染者に対する死者の死亡率だ。世界保健機構(WHO)やインドネシア保健省の統計を基にするとインドネシアの死亡率は実に8.5%に達している。新型コロナによる死者数が1000人を超える国での死亡率を見ると、中国の4.0%、スペインの6.0%、イランの7.5%などという具合で、いずれもインドネシアに比較すれば低い。唯一インドネシアを上回っているのはイタリアのみだ。イタリアの感染者数は5万3578人、死者は4825人、死亡率は9.0%である。ちなみに世界平均は4.3%である(数字はいずれも23日の時点)。

高い死亡率に潜む陥穽はあるのか

 死亡率は感染者の総数に対する死者数の比率であることは言うまでもない。インドネシアで異様に高い死亡率となっている原因については、様々な観測、推論、分析が出ているが、どれも納得できる科学的証明に基づいたものとは言えず、現段階では推定の域を出ていない。

 一部では、この高い死亡率の数字には感染者数に関する統計の取り方、数字のマジックあるいは陥穽が隠されている、との見方も出ている。

 その一つが中国・武漢で最近明らかになった「感染で陽性とされても症状のない患者は感染者数にカウントしない」という方法である。