(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年3月20日付)

訪米してドナルド・トランプ大統領と会談するアイルランドのレオ・バラッカー首相(3月12日、写真:UPI/アフロ)

「スーパーヒーローが全員マントを翻しているとは限らない」と指導者は言った。「なかには白衣や手術着を着ているヒーローもいる」。

この発言の主はドナルド・トランプ米大統領でもボリス・ジョンソン英首相でもない。アイルランドのレオ・バラッカー首相がその人だ。

 あらゆる危機と同様に、疫病の流行は人の本質を白日の下にさらす。

 この傾向が最もよく当てはまるのが、指導者の立場にある人々だ。そして、指導者においては正直さと勇気、そして品位が決定的に重要な特質となる。

 トランプ氏はここ数日、新型コロナウイルスの脅威の大きさをようやく把握したことがうかがえる行動を取っている。

 残念なのは、その脅威を最初からずっと理解していた「ふり」をすることに同じくらいエネルギーを使っていることだ。

 その結果、大統領は自分のメッセージの効果を自ら弱めてしまっている。メッセージの効果は、人に信頼されるか否かに左右されるからだ。

 疫病対処の手引きの歴史は、少なくともマルクス・アウレリウス――自らも疫病で命を落とした2世紀のローマ皇帝――にまでさかのぼる。

 裕福なローマ市民が別荘に逃げ出す傍ら、アウレリウスは都にとどまり、身をもって範を示した。