洗浄作業が行われている、新型コロナウイルスで集団感染が発生したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス号』。2020年3月9日撮影(写真:Pasya/アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家)

 自衛隊は新型コロナウイルス対策のため、チャーター機で帰国した邦人の支援、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」(以下「DP号」)に対する支援などを行ってきましたが、3月16日をもって活動は終結しました。

 この間、厚労省職員などの間で感染者が発生する中、延べ約4900名が活動した防衛省・自衛隊では1人の感染者も出なかったことは、自衛隊の優秀さを示したものと言えるでしょう。

もしも船内で暴動が発生していたら

 しかし筆者は、かつて自衛官として災害派遣などに携わってきた者として、今回の活動にはある懸念を抱いていました。特にDP号における活動においては、その懸念が大きく、問題が発生しないことを祈りながら、日々のニュースをチェックしていました。

 その懸念とは、自衛隊の活動根拠と権限に関してでした。

 たとえば、船内で暴動が発生した場合、自衛隊は、当然それを抑えることを期待されるでしょう。しかし、現在の自衛隊にはそのための十分な権限がないのです。

 もし暴動が発生し、暴徒が感染を広めるようなことになれば自衛隊が非難されますし、権限を越える行為、いわゆる超法規的活動を行って暴動を抑えれば、これまた非難されます。

 幸いにして、そのような事態には至りませんでしたが、新型コロナの世界的拡散は継続しており、再度、自衛隊の活動が求められる可能性は消えていません。今般の活動が無事に集結した今こそ、この問題を考えるべき時です。

 以下では、この問題について、防衛省に問い合わせた結果を含めて解説します。