新型コロナウイルスの感染拡大の影響で客足が途絶えた英国・ロンドンのレストラン(2020年3月18日、写真:ロイター/アフロ)

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 新型コロナウイルスは、ヨーロッパで感染爆発が始まった。 死者が3000人を超えたイタリアをはじめ、ドイツやフランスやスペインにも感染が広がり、アメリカでもトランプ大統領は国家非常事態を宣言した。

 それに対して2月初めにクルーズ船で大量の患者が出て大騒ぎになった日本は、今では国内の患者は約750人、死者は約30人。人口比でみるとG7諸国で飛び抜けて少なく、世界から「日本の奇蹟」と賞賛されるようになった。これはどうなっているのだろうか。

イギリスで大論争を呼ぶ「集団免疫」戦略

 一時はワイドショーで「PCR検査キットが足りない」と騒がれ、このために感染者数が低く出ているといわれたが、その後、検査が増えても新規患者は増えない(先週から減っている)。

 国の専門家会議は「実効再生産数はおおむね1程度で推移している」という見解を発表した。再生産数は感染力(1人の感染者が何人に感染させるか)を示す指標で、これが1ということは、コロナの感染拡大は止まったということだ。もしこれが今後も続くと、日本のコロナ感染は遠からずピークアウトするだろう。

 再生産数を1にすることは、先週イギリスが採用して話題になった集団免疫戦略の目標である。集団免疫とは「集団の中で免疫をもつ人が十分多くなったら感染の拡大が止まる」という理論である。

 1人が3人に感染させ、その各人が3人に感染させると9人・・・というようにネズミ算で感染者が増えるが、3人のうち2人に免疫ができると感染の拡大が止まる。ある集団の中で1人の感染者が1人しか感染させなくなった状態を「集団免疫が実現した」という。このとき感染はゼロではなく、一定の感染が安定して続く。

 これに対して中国では封じ込め政策が採用され、感染ゼロが目標になった。このためには都市を封鎖して感染者をすべて隔離するなどの大規模な強制措置が必要で、隔離をやめるとまた感染が増えるので、無期限に封鎖や隔離を続けなければならない。