(英フィナンシャル・タイムズ電子版 2020年3月13日付)

事実上のゼロ金利政策を発表したFRBのジェローム・パウエル長官(3月15日、写真:ロイター/アフロ)

 この10年というもの、米国株式市場は薬物依存症患者のようになっていた。2008年まで、投資家は金融のヘロイン(すなわち、民間セクターの信用バブル)に夢中だった。

 そのバブルが弾けると、次はモルヒネの金融版(すなわち、中央銀行による数兆ドルの下支え)に手をつけた。

 そして3月12日、歴史的な株価暴落を目の当たりにした投資家たちは、恐ろしい疑問に頭を悩ませているに違いない。あの金融のモルヒネは効かなくなってしまったのか、という疑問だ。

 どういうことか考えてみてほしい。米連邦準備理事会(FRB)は2016年以降、市場を量的緩和と超低金利から引き離そうと試みてきた。

 ところが市場が動揺すると――例えば、レポ市場で昨年見られたような状況になると――、FRBは必ず新しいクスリを持って戻ってきた。そのおかげもあって、株式市場と債券市場で驚くような強気相場が続いてきた。

 3月初めも、当初はこのパターンが繰り返されるように思われた。

 株価が急落した後、FRBは0.5%の緊急利下げに踏み切った。株価はその直後に急反発し、ダウ工業株30種平均は500ポイント上昇した。ところが、その日のうちに再び下落してしまった。

 そして3月第2週には、FRBの施策によって一服できる時間はさらに短くなった。

 FRBは12日に新たな資産買い入れの開始と、1兆5000億ドルの資金注入によるレポ市場の下支えを約束したものの、株価は短時間上昇してから再び急落し、結局前日比で10%近く下落してその日の売買を終えた。