(英エコノミスト誌 2020年2月29日号)

中国のショッピングモールに設置された通行人の体温を自動計測する装置(3月1日、写真:新華社/アフロ)

誰がどこに行って誰と会ったか追跡する態勢が最も整っているのは「非」国有企業だ。

 新型コロナウイルス感染症「COVID-19」が中国国内に広がり始め、中央政府が自国を閉ざし始めた時、沈大成(シェン・ダーチョン)氏は友人たちから予言者と呼ばれた。

 同氏が2018年に発表した短編小説「盒人小姐」が、ウイルスへの恐怖が渦巻く世界を舞台にしているからだ。

 この架空の世界では、富裕層は密閉された箱の中で暮らしているために病原体から守られている。しかし、その他の人々は定期的に血液検査と消毒液の散布を受けなければならない。

 感染していると分かれば身柄を拘束される。その場で処刑されてしまう場合もある。おまけに、保菌者を探し出すセンサーが町の至る所に隠されている。

 現実の世界の中国で広がった伝染病には、密閉された箱と処刑以外の部分でこのディストピア(地獄郷)に通じるものがある。

 浙江省杭州市に息子と夫の計3人で住んでいるソンさんの事例を見てみよう。

 ソンさんはスマートフォンに入っている杭州市の健康チェックアプリの自己判定機能を使って鼻水が出ると申告したところ、ウイルスに感染しているかもしれないと見なされた。

 確かに、北西部の別の省にある故郷から帰ってきたばかりで、そこでは湖北省から来た人たちにも会っていた。