台湾・台北でも多くの人がマスクをしている(2020年2月26日、写真:AP/アフロ)

(澁谷 司:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授)

 今年(2020年)2月24日、中国共産党は例年3月5日から始まる全国人民代表大会を正式に延期すると発表した。異例である。

 連日、報道されているように、中国武漢市で発生した「新型コロナウイルス」感染(以下「新型肺炎」)は、猖獗(しょうけつ)を極めている。とりわけ武漢市を中心にした湖北省の惨状は、筆舌に尽くし難い。同省では、病院はもとより、軍や警察、刑務所の中にも「新型肺炎」が蔓延しているという。

 実は、湖北省を中心に、河南省・湖南省・広東省・浙江省では「新型肺炎」は拡大の一途を辿る。ちなみに、2月24日、武漢市は一部封鎖解除を発表したが、すぐに撤回している。

 一方で、北京政府は、目下、景気減速の苦境に陥っているため、何とか工場や会社を再開したい。

 けれども、各地が封鎖され、原則、人の移動が禁じられているので、工場や会社に人が集まらない。ましてや、工場や会社に社員が戻って来ても、お互い「新型肺炎」をうつす危険がある。もしそうなれば、その工場や会社は、しばらく稼働できなくなるだろう。

 在宅でテレワークが可能ならば良いが、工場ではそういう訳にはいかない。現在、習政権は、このジレンマに悩まされている。

錯綜した新型肺炎に関する報道

 さて、我が国では、毎日、テレビで感染症の専門家と称する人々が「新型肺炎」について様々な解説を行っている。