株式会社パソナグループは2019年12月12日、就職氷河期世代を主な対象とした、「Middles Be Ambitious(ミドルズビーアンビシャス/MBA)制度」を開始すると発表した。兵庫県淡路島の地方創生事業の一環として街づくり人材を育成するもので、2020年4月よりスタートさせる。

政府の支援施策と合わせて就職氷河期世代のキャリア形成をサポート

 雇用環境が厳しかった1993年~2005年頃に就職活動を行い、希望する就職ができず思うようなキャリアが築けなかった、いわゆる「就職氷河期世代」。現在、政府もこの世代を対象にした就労支援を表明しており、2019年6月には「就職氷河期世代支援プログラム」として、3年間で新たに30万人の雇用創出を目標としている。

 今回、パソナグループは、かつて就職難に直面した就職氷河期世代を中心に正社員採用をおこない、将来へ向けたキャリア再形成を支援することを目的として、「Middles Be Ambitious(ミドルズビーアンビシャス/MBA)制度」を開始する。同制度では、地方創生事業を通じて街づくりをおこなう2つのコースが準備されており、合計300名を募集するという。

「淡路島地方創生コース」では、淡路島の活性化を目的とした人材誘致などの観光事業に200名を、「UIJターン地方創生コース」は、同社が全国の拠点で手掛ける地方創生事業に携わる100名を採用する予定だ。また、人員募集は、地方創生へのマーケティングや観光ビジネス事業をおこなう「営業・プロモーション」や、施設マネジメントに関わる「テーマパーク」、Webデザインや映像クリエイター向けの「デザイン・制作」や、調理・製菓や通販事業運営の携わる「飲食・物販」、そして、自然栽培や食育に関わる「農業」など、多岐にわたる職種でおこなわれる。さらに、採用者の適性に応じて、職種を問わず横断的に活躍することが求められている。

 この就職支援事業の一環として、6カ月間の「人財育成研修プログラム」も用意される。英語やIT技能、農業基礎や財務経理などを学ぶ「基礎研修」を始め、ホスピタリティや健康・ヘルスケア、観光、アニメなどを学ぶ「専門研修」、テーマパーク施設やイベント・プロジェクトの運営から経験を積む「実践研修」など、段階的に地方事業のノウハウを身につけていく。入社から半年間は各種研修を通した学びや経験の時間に当て、その後実務に従事することになる。

 政府に限らず企業も氷河期世代への就職支援に乗り出したことは、今後、正規雇用者を増やすうえで不可欠の取り組みだ。しかし、解決すべき課題はいまだ多い。今回の試みが成功すれば、就職氷河期世代のキャリア再構築と地方創生のどちらの課題にとっても有用な解決策のひとつとなるだろう。MBA制度の今後に注目したい。

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HRプロ編集部

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