グレタ・トゥーンベリさんらが参加してダボス会議の会場周辺で行われた温暖化対策を求めるデモ(2020年1月24日、写真:AP/アフロ)

 世界経済フォーラムの年次総会(通称「ダボス会議」)がスイスのダボスで1月に開催された。今年(2020年)のダボス会議は環境問題一色だったが、火力発電所の増設を進め、ペットボトルを廃止せずリサイクルの効率化を試みる日本に対しては厳しい指摘が相次いだ。

 国内では、日本の取り組みを世界に理解してもらうべきとの論調が強いが、それはほとんど無意味であるどころか、おそらく逆効果となる可能性が高い。環境問題というのは国際的な権力闘争そのものであり、理屈の領域などとっくの昔に越えている。冷酷な国際社会のパワーゲームに比して日本人のマインドはあまりにもナイーブであり、このままでは日本だけがバッシングを受け、高い代償を要求されるという結果にもなりかねない。(加谷 珪一:経済評論家)

社会のIT化が状況を一変させた

 ダボス会議は世界のリーダーが一堂に顔を揃え、ビジネスや政治、経済などの諸問題について議論するイベントだが、欧州が拠点ということもあり、どちらというと欧州勢の意向が強く反映されることが多い。とはいえダボス会議の影響力は大きく、ここで議論された内容は、ほぼ間違いなく国際社会の大きなトレンドとなる。

 その意味で、今回のダボス会議が環境問題一色になったという点は注目に値する。

 これまで環境問題というのは、重要なテーマであると認識されていたが、本格的な対策は進んでいなかった。その理由は先進国と途上国との間に大きな利害対立が生じており、これを埋める手段が見つからなかったからである。

 だが近年の驚異的な経済成長と社会のIT化、シェアリング化の進展が状況を大きく変えた。