(英エコノミスト誌 2020年2月8日号)

大統領の一般教書演説原稿を引き裂く米下院のナンシー・ペロシ議長(2月4日、写真:AP/アフロ)

ドナルド・トランプ大統領は議会上院で無罪を認められ、支持者から崇められ、悔悟の念などみじんも抱いていない。

 メイン州選出のスーザン・コリンズ上院議員は先日、ドナルド・トランプ大統領の無罪に一票を投じることを発表した際、大統領はこの弾劾で「かなり大きな教訓」を学んだと思うと述べた。

 自分の政治的ライバルに濡れ衣を着せるよう外国の指導者に強要したくなることが次にあっても、その時は「もっともっと慎重になるだろう」というわけだ。

 その一方で、コリンズ氏のような共和党議員のトライバリズム(部族主義)のせいで連邦議会は大統領にタガをはめられないことになってしまった。

 おかげでトランプ氏はこれまで以上に大胆になり、自分の利益の妨げになるルールや慣習を片っ端から無視するようになるかもしれないとの見方もある。

 弾劾裁判で無罪が言い渡される前日の2月4日、連邦下院の議場を埋め尽くした聴衆の前で行われた同氏3度目の一般教書演説は、その見方の証左となる内容だった。

 弾劾裁判の最中に行われた一般教書演説で自責の念を表明したビル・クリントン元大統領とは異なり、トランプ氏はウクライナ疑惑にも、そのせいで行われた上院での裁判にも言及しなかった。

 裁判はその翌日、政党の線に沿った投票結果で終わり、大統領に無罪判決が出た。共和党で有罪に一票を投じたのはミット・ロムニー氏ただ一人だった。

 だが、無罪判決が出る前からトランプ氏はコリンズ氏の見立てを退け、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対する自分のアプローチは「完璧だった」から、弾劾裁判で学ぶことなど一つもなかったと記者団に語っていた。