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(山田敏弘:国際ジャーナリスト)

 日本へのサイバー攻撃が次々と明らかになっている。

 三菱電機は1月20日、三菱電機がサイバー攻撃を受けていたことを認め、「当社のネットワークが第三者による不正アクセスを受け、個人情報と企業機密が外部に流出した可能性があることを確認している」と発表した。三菱電機からは、近年の新卒採用応募者と経験者採用応募者の個人情報1987人分が漏れ、三菱電機従業員4566人分と関係会社の退職者のものが1569人分の情報が中国系のハッカーらによって盗まれた。

 合計8122人分が漏れたわけだが、これは人材をリクルートしたい中国政府系ハッカーによるスパイ工作だと考えていい。中国は今、習近平国家主席が中国を「世界の工場」から「技術国家」にするべく2015年に掲げた「中国製造2025」で、先端技術の開発やそのサポートを担える人材を必死で探している。韓国や台湾ではその動きが顕著で、カネにモノを言わせるなど強引なリクルートが現地では問題にもなっている。

三菱電機に続きNECでも被害が明らかに

 最近出版した拙著『サイバー戦争の今』(ベスト新書)では、そうした日本を襲うサイバー攻撃の実態をリポートしているが、筆者はこうした攻撃は氷山の一角に過ぎないと再三警告してきた。

 そんな最中、今度はNEC(日本電気)がサイバー攻撃に遭った。NHKによれば、「およそ2万8000件のファイルが流出した可能性がある」という。NECは「情報流出などの被害は確認されていない」と語っているが、一方で「潜水艦用センサーの情報といった自衛隊装備の資料も含まれていた」とも報じられている。攻撃者は、三菱電機のケース同様、中国系サイバー集団とみていいだろう。

(参照記事)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200130/k10012266431000.html

 しかし、国外の諜報機関関係者やサイバーセキュリティ関係者らへの取材で、筆者はサイバー攻撃を受け、情報を盗まれているいくつもの日本の大手企業の名前を何度も耳にしている。その中には、NECの名前もあったし、ほか日本を代表するような大手企業やメディアなどもあった。技術力が高く、優秀な人材がいる日本は、過去何十年も中国や北朝鮮、韓国などからのサイバー攻撃にさらされてきた、というのが現実だ。