イノベーション創出のために日本企業が解決すべき課題とは

 中堅から大手企業を中心に、新規事業創出を上流から下流までトータルで支援するRelic。CEOの北嶋貴朗氏に、イノベーションが生まれにくい企業が抱える共通の課題についてずばり聞いた。

新規事業立ち上げのプロフェッショナルが指摘する日本企業の課題

ご自身がこれまで新規事業の立ち上げにどう関わってきたのか教えてください。

北嶋貴朗(以下、北嶋) 新卒で入ったベンチャー企業で、本業が傾く中で新規事業を模索するという、切羽詰った体験をしました。その後、コンサルティングファームで企業の新規事業支援を3年ほど経験し、Relic立ち上げ直前に在籍してたDeNAでは、事業リーダーとしてECを中心に7つほど事業を立ち上げました。当事者と支える側という正反対の立場で、大小さまざまな新規事業立ち上げのパターンを経験してきました。

Relic 代表取締役CEO Founder 北嶋貴朗氏

新規事業を支援するRelicという会社を立ち上げたのはなぜですか?

北嶋 前職のDeNAでは、大きな市場や課題と向き合う新規事業創出のために、外部の大企業とのオープンイノベーションを通じて事業開発をすることが多かったのですが、パートナー企業が自身の素晴らしいアセットを十分に事業開発に生かせていないことが多いと感じていました。一方で、アセットを十分に生かすことができれば、スタートアップではなかなか実現できない事業を生み出すことができるということも同時に学ぶことができ、今後の日本経済には、スタートアップだけでなく様々なアセットやリソースを保有する大企業を中心としたイノベーション創出が必要だと痛感したのです。

 ただ、既存のコンサルティングやソリューションでこれを実現しようとしても、支援の領域がアイディエーションやプランニングなどに限定されてしまい、事業の成否を左右するプロダクト開発やグロースなども含めた「エグゼキューション」まで責任を持つことが難しいこともわかっていました。そこで、それまでの経験を踏まえて新規事業のプロフェッショナルとして、上流から下流までトータルに新規事業創出を支援する仕組みを構築することが日本企業には必要だと思い、現在の事業を立ち上げました。

見立てが当たり、事業は目覚しく成長してきました。

北嶋 裏を返せば、私たちが主に支援している中堅から大手の企業の多くが、新規事業を生み出すインキュベーションに苦戦しているということでしょう。純粋なスタートアップと大手企業では新規事業創出に求められる意義や規模感、時間軸などに違いがあり、適したアプローチも異なってきます。また、スタートアップ界隈全体では近年ある程度のエコシステムが出来上がりつつありますが、大手企業でそのような構造を実現できているケースは非常に少ないのが実情です。逆に既存の製品・サービス・市場が足かせになったりして、うまくいかないことも多々あります。

 ただ一方で、規模の大きな企業はアセットも大きい分、新規事業が軌道に乗ったときのインパクトが大きい。そこを支援することで、日本経済全体に貢献できると考えています。多くの企業を効率的にサポートするために、新規事業開発やイノベーション創出に特化したSaaS型のプラットフォームなど、ITを駆使したサービスも提供しています。