(英エコノミスト誌 2020年1月25日号)

1月15日ホワイトハウスで米中貿易交渉の「第1段階」に合意した米中両国(写真:AP/アフロ)

米国製品の購入を増やす中国の約束には、ムダと歪みのリスクが潜んでいる。

 スイスの山岳リゾート、ダボスで世界経済フォーラム(WEF)の年次総会に参加したドナルド・トランプ大統領は1月21日、居並ぶ世界の有名人たちを前にして、米国の通商政策の「抜本的な改革」について豪語した。

 先日署名した中国との「第1段階の合意」によって貿易の障壁は低くなり、知的財産も守られる。

 また、中国が米国のサービス、エネルギー、農作物、工業製品の輸入を向こう2年間で2000億ドル増やすと約束したことについても得意げに語った。

 この話に誇張はなかった。

 実際、貿易のルールではなく購入額の水準について合意したことは、米国の通商政策が根本的に変わったことを告げている。ただし、それはより良い方向への変化ではない。

 米国は以前も通商関係において、数値が一定水準に達したら何らかの行動を取るという結果重視型のルールを採用したことがあった。

 トランプ氏のような重商主義者は、貿易を2通りのアプローチで管理する。外国企業の対米輸出を抑えるか、または米国製品をもっと購入するよう外国に促すか、どちらかだ。

 1980年代の米国の通商交渉担当者は、時間や労力のほとんどを前者に費やしていた。急増する貿易赤字を抑え込めという政治的な圧力に直面し、日本の貿易慣行はアンフェアだと確信するに至ったからだ。

 こうした「自主的な」抑制は自動車や鉄鋼、工作機械、繊維製品、半導体などの品目で行われ、ピーク時には米国への輸出全体の約12%にその影響が及んだ。