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 コーン・フェリー・ジャパンは2019年12月、「世界の報酬動向調査」に基づいた2020年の各国における給与予測を発表した。本調査は、130カ国以上および2万5,000社の2,000万人以上のデータから成る同社の報酬データベースを用いて実施されたものだ。世界全体で見る今年の昇給率は、昨年と比較すると概ね同じペースであることが予想される一方で、インフレ率の低下にともない実質賃金は上昇する見込みとなった。

 労働者に朗報。多くの地域で実質賃金上昇を予測

 同社によると、世界全体で見た2020年の平均昇給率は4.9%増加すると見込まれている。想定されるインフレ率約2.8%を除くと、実質賃金は2.1%増加する予測だ。2019年の昇給率は5.1%だったがインフレ率3.8%を除くとわずか1.3%の実質賃金の増加に留まったことと比べると、労働者にとっても朗報といえる結果だ。ただし、インフレ率が低いことから、いくつかの主要国で経済成長が失速する可能性があることも示唆されている。

世界各国の報酬動向と実質賃金の成長は

 世界の各地域、および各国における報酬動向予測を見ると、アジアの実質賃金の成長が最も高くなると予測され、昨年の2.6%から0.5%増加した3.1%(昇給率5.3%、インフレ率2.2%)に上る見込みだ。北米を見ると、昇給率は昨年から横ばい傾向だが、低インフレ率がわずかに実質賃金を押し上げ、1.1%になるとしている。

 また、ヨーロッパも昨年と比較すると上昇することが予測されている。地域別に見ると、東ヨーロッパの方がやや優勢となり、西ヨーロッパで1.2%、東ヨーロッパで2.6%となった。その他、アフリカや中東、ラテンアメリカなど太平洋地域の各国も低インフレ率の影響で実質賃金の上昇が見込まれている。

 同時に、世界各国の実質賃金の成長予測についても発表されている。日本では昨年の0.1%から0.5%上昇した0.6%になる見込みだ。同様に、シンガポールは3%から3.6%に、オーストラリアでは0.2%から1%、UAEでは0.7%から2.5%に上昇すると予測している。また、米国は、昇給率は3%と昨年同様だが実質賃金を見ると0.6%から1.4%に増加。英国は0.4%と昨年の0.6%に近い値となるようだ。上昇する国が多くある一方、中国では2017年の4.2%、2018年の3.2%からさらに低下する見込みで、2.9%の予測となった。

 日本の昇給率予測2%は、近年大きな変化を見せず同様の水準で推移している。2019年10月には消費税が8%から10%に引き上げられたが、軽減税率制やキャッシュレスポイントの還元事業の効果があり、昇給率へ強い影響をもたらすと考える企業も少ないだろう。AIなどテクノロジーの発達や活用が進む中、企業が求める人材像も変化している。そのような中、昇給原資の効果的な配分方法を検討することが必要となるのではないだろうか。

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HRプロ編集部

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