偵察訓練を行う沖縄キャンプ・ハンセンの在日米海兵隊(写真:米海兵隊)

(北村 淳:軍事社会学者)

 現行日米安保条約の調印から60周年を記念するレセプションの席上で、安倍首相は「日米安保条約は不滅の柱」「日米安保条約はアジア、インド太平洋、そして世界の平和を守り繁栄を保障する不動の柱」と、日米安保条約の“世界的意義”を強調した。

「不滅の柱」は安倍政権の願望

 たしかに、日本周辺の軍事情勢に鑑みると、極端に少ない国防予算しか支出しようとせず、自国の防衛をアメリカの軍事力に“病理的なほど”(外交官も歴任したことのある米海兵隊随一の日本通将校の表現)異常に頼り切っている日本にとっては、日米安全保障条約が「不滅の柱」「不動の柱」であってほしいのは無理もないところである。

 しかしながら願望と現実を混同してはならない。「不滅の柱」「不動の柱」は安倍政権の願望あるいは政治的目標であって、それが現実のものなのかどうかは別問題といえよう。

 現に、安倍政権を筆頭に日本側が「日米安保条約よって日本を防衛してくれる」と信じて(あるいは、信じようとして)いるアメリカ軍の先鋒を務めるアメリカ海兵隊では、「永遠の友も永遠の敵もいない」が座右の銘として受け継がれている。イギリス首相パーマストンの「英国には永遠の友も永遠の敵もいない、あるのは英国の国益だけだ」という“名言”を言い換えた言葉である。

 日本側がどのような期待を抱いていても、国際軍事常識は冷徹だ。安倍首相の日米安保条約に対する願望が現実と一致しているのか否かは慎重に見極められねばならない。

海上自衛隊と米海軍のP-3哨戒機