ウクライナの首都キエフ

 2019年12月末、ウクライナ・ロシア両国のガス公社は天然ガス輸送契約に調印した。

 これにより、2009年ガス輸送・売買契約の失効~ウクライナを経由するロシア・天然ガスのヨーロッパ輸送停止が回避され、2020年からの5年間、天然ガス輸送が継続されることになる。

ロシアからのガス輸入に依存せず

 今回の調印劇は、既報(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58728)の通りノルド・ストリーム2の稼働遅れでロシア側が譲歩せざるを得なくなったことが大きく影響している。

 ロシア側の弱味を冷静に見極めたウクライナ側の交渉術が光るが、ウクライナ側の耐性が強くなったことも交渉を左右した一因として挙げられよう。「ロシアのガス輸出に脆弱なウクライナ」はもはや過去のものとなっている。

 ウクライナは一定の国内天然ガス生産量があるが、さらに2014年の危機以降、政策的に天然ガス消費を減らしている。

 独立直後には年1200億m3、ウクライナ危機前も年500億~600億m3を消費したが、今や年300億m3台に落ちており、必要な輸入量も年100億~150億m3にとどまっている。

 そして、その輸入はロシア・ガスプロムを避けてもっぱらヨーロッパ側から輸入されている。

 すなわち、EU市場で調達された天然ガスを、パイプラインを逆方向に利用し、所謂「リバース輸入」体制で購入しているのである。リバース輸入の輸送力は増強されており年250億m3に達している。

 したがって、ロシアから輸入せずとも、国内ガス生産とリバース輸入で国内消費量を完全にカバーすることができる(グラフ1参照)。

 本稿執筆時点(2020年1月20日)では、ウクライナ・ロシア間売買契約は締結されておらず、交渉入りも伝えられていない。

(グラフ1) ウクライナの天然ガス供給源、単位:億m3

(出所) ナフトガス・ウクライナ社HP URL http://www.naftogaz.com/www/3/nakweb.nsf/