第95回天皇杯全日本バスケットボール選手権大会でのサンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生(写真:田村翔/アフロスポーツ)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 70年間の人生で2回目にバスケットボールの試合を通して観た。2019年度全国高校バスケットボール選手権大会、いわゆる「ウインターカップ」の決勝戦である(いかにも知った風に書いているが、付け焼刃である)。

変幻自在のドリブル、意表を突くパス…

 昨年12月29日、日曜日の正午から、テレビ朝日で生中継された。わたしが知らないだけかもしれないが、高校バスケットの決勝戦が地上波でテレビ中継されることなどほとんどないのではないか。

 高校野球の甲子園はいまでも国民にとっての一大関心事で、テレビ放映はNHK。高校サッカーは国立競技場でこちらは日本テレビ。ラグビーは花園ラグビー場で、放映はTBS。高校バレーボールはフジテレビが春高バレーと銘打って全面的にバックアップしている。

 それに比べて高校バスケットのテレビ中継は、まるで印象が薄いのだ。どうやら中継はいままで何度も行われているようだが、世間的にはほとんど話題に上がったことがない。バスケットボールは中高生にはともに人気部活のベスト3に入るほど人気があるのに、なぜ世間では人気がないのか。

 それはともかく、決勝戦の前日、福岡第一高校に河村勇輝君というスター選手がいることをスポーツニュースで知り、そのことがその試合を見る動機になった。決勝戦はその福岡第一高校と、福岡大学附属大濠高校の福岡勢対決であった。附属大濠が後半激しく追い上げたが、福岡第一に一日の長があり、75対68で福岡第一が優勝した。試合はスピード感に溢れ、試合運びや闘い方は清冽、という印象を受けた。変幻自在のドリブル、意表を突くパスや爽快な3点シュートなどの驚嘆すべきプレイは、いかにも新鮮だった。

2019ウインターカップ男子決勝での河村勇輝選手(福岡第一、右)と田邉太一選手(福岡大学附属大濠、左)(写真:アフロスポーツ)

開催国特権で東京オリンピックに出場

 2017年のバスケットボールW杯のアジア2次予選で、男子日本代表はいきなり4連敗を喫したが、その後、日本人2人目のNBAプレイヤーとなった渡邊雄太選手と、2019年のNBAドラフトが確実視されていた八村塁選手が加入したこともあって8連勝し、W杯中国大会の出場を決めた。決勝戦好きのわたしはそのカタールとの最終戦をテレビ中継で観た。そのときが、わたしがバスケットボールの試合を生まれてはじめてフルで観た最初だったのである。

 日本はW杯の本大会では1次予選で1勝もできず敗退したが、今年の東京オリンピックは、開催国特権が認められて男女とも出場が決定している。男子はじつに1976年モントリオール大会以来44年ぶりの出場である。