1月8日、イランからの報復を受け、ホワイトハウスで声明を発表するトランプ大統領(提供:White House/ZUMA Press/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 1月3日、トランプ大統領の指示を受けた米軍は、イラクのバグダッドで、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した。ソレイマニは、海外での特殊任務を担当し、アメリカで言えばCIA長官、中東軍司令官、大統領特使を兼任するような大物軍人であり、国民的英雄である。

 イランは復讐することを明言し、7日の深夜、イラクのイラク西部にあるアル・アサド基地など2カ所を10発以上の弾道ミサイルで攻撃した。その結果、緊張が一気に高まり、原油価格は高騰し、世界で株価が下落するなど大きな影響がでた。

「大統領再選」という最大の目的が数多の判断ミスを生む原因に

 イランの最高指導者ハメネイ師は、昨夜の米軍基地へのミサイル攻撃は、ほんの平手打ちにすぎないと警告したが、トランプ大統領は、「すべて順調だ。被害状況を確認中。米軍は世界最強だ。明日の朝、声明を出す」とツイートして、とりあえずは様子見の姿勢を示した。

 そして、8日、トランプ大統領は、「ミサイル攻撃によって米兵に犠牲は出ていない、最小限の被害だ」と述べ、軍事的な報復はしないと演説した。その上で、経済制裁を強化する方針を示した。その結果、株式市場や原油相場も好転した。

 しかし、アメリカとイランとの対立は解消しておらず、今後の展開には注意する必要がある。最大の問題は、トランプの中東政策の目標が不明確であること、そして政策に一貫性がないことである。それは、北朝鮮に対する政策についても同様である。