マツダ社長、米フォード社COO、CEOを歴任したマーク・フィールズ氏(2017年4月資料写真、写真:AP/アフロ)

(花園 祐:上海在住ジャーナリスト)

 穏やかな年末ムードを吹き飛ばすかのように、背任などの容疑で起訴されていた元日産自動車CEOのカルロス・ゴーン氏が昨年(2019年)末、祖国レバノンへ電撃的海外逃亡を果たすという映画さながらのニュースが飛び込んできました。このニュースは筆者が住んでいる中国でも一斉に報じられ、大きな注目を集めました。

 そんなゴーン氏にかけられた背任容疑、それを放置してきた日産の企業体質について、ゴーン氏の逮捕以降、各メディアがさまざまな角度から解説しています。今回は、日産とゴーン氏の問題の本質およびその対策について、マツダの事例と比較しながら筆者の見解を紹介したいと思います。

創業家の存在は不正防止につながるか

 ゴーン氏が守銭奴であることは、日産関係者の間ではかねてから周知の事実だったようです。なぜ彼が経営の公私混同を行ったのかについては、わざわざ議論するまでもないでしょう。今回の問題の論点は、なぜ日産はゴーン氏の公私混同を許し、それを見過ごしてまったのかに尽きます。

 この論点について、2018年11月のゴーン氏逮捕以降、様々な分析や評論が各メディアから出ています。単純に他の役員がしっかりしていなかったとか、提携先の仏ルノーとのパワーバランスなどに原因を求めたり、トヨタ自動車などと違って日産自動車には創業家一族が不在であることを原因とする指摘も見られました。社内で求心力となる創業家が日産自動車にはいないため経営者が私利私欲に走りやすい企業風土であるという指摘です。

 しかし筆者は、創業家不在説にはあまり賛同できません。創業家のいない自動車メーカーはほかにもあります。そうしたメーカーに経営者の暴走が頻繁に起きているのかというと、けっしてそんなことはありません。また、創業家出身者が経営トップに就き暴走するという事例は古今絶えません。それらを考えると、ゴーン問題を考えるにあたって「創業家の不在」はあまり参考にはならないでしょう。