(英フィナンシャル・タイムズ紙 2020年1月7日付)

イランで行われたソレイマニ将軍の葬儀(写真:AP/アフロ)

「紳士、淑女のみなさん、彼を捕まえました」

 筆者は今も、連合国暫定当局(CPA)代表として侵攻後イラクの統治に当たった米国のポール・ブレマー氏がサダム・フセインの身柄確保を発表した際の嬉々とした口調を覚えている。

 その高揚感は理解できた。だが、何十年にもわたって米国の外交政策を損ねてきた誤謬も表していた。

「ドクター・イービル症候群」とでも呼ぶといいだろう。

 これは、「悪者」の殺害や捕獲が複雑な外交政策問題を解決するカギになるというハリウッドで人気の考え方だ。

 サダム・フセインの場合、そうはならなかった。最も恐れられたイラン軍司令官ガセム・ソレイマニが先週殺害された後も、ドクター・イービル理論が通用する見込みは薄い。

 これまでに米国によって倒された「悪者」の多くは、本当に邪悪だった。

 標的にされ、首尾よく殺害ないし捕獲された人物には、サダム・フセインとソレイマニ司令官だけでなく、国際テロ組織アルカイダを率いたウサマ・ビンラディンやリビアの独裁者ムアマル・カダフィが含まれている。

 米国にとっては、ビンラディンのような宿敵をついに捕まえることは感情的なカタルシスをもたらす。