1月5日、パキスタンのイスラマバードでイランのソレイマニ司令長官の殺害について聞く少年(写真:AP/アフロ)

喜びも束の間のソレイマニ殺害

 米軍によるイラン革命防衛隊の対外工作を担う精鋭部隊「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官殺害から一夜明けた米国。

 何と表現していいか分からないような異様な空気にすっぽりと包まれている。

 ドナルド・トランプ大統領に「米国民の生命を守るために奴を殺したのだ」と言われれば、これまでソレイマニ司令官など全く知らなかった米一般大衆も「よくやった」と最初は喜んだふりをしたのだ。

 米国人にとって最も重要なことは自分たちの生命と財産を守ってくれる国家であり、軍隊だ。だからタテマエでは誰も軍隊の悪口は言わない。

 ところがメディアが「イランは必ず仕返しをするに違いない」と報ずれば、いつまた「悪い奴ら」が米国や自分を襲ってくるか、怖くなってきた。

 9・11同時多発テロの恐ろしさは今なお、米一般大衆の記憶に生々しく残っている。

 イランという国連の加盟国、れっきとした国家の将軍を殺してしまったからにはイランだけでなく、イランの息のかかった過激派テロ集団がいつ米国人を襲ってくるか分からない。

 米国人と見れば、右(保守派)だろうと左(リベラル派)だろうと、「奴ら」は「仇討ち」に出る可能性がある。

 トランプ大統領は、「米国民を標的に差し迫った攻撃を企てていたからソレイマニ司令官を殺した」はずなのに「攻撃されるチャンス」は以前よりさらに増してしまった。

 米国内に異様な空気が広がっているはそのためだ。

「報復」の標的は何もイラク駐留の米軍だけではない。中東地域、いや世界各地にある米軍施設、米国籍者にまで向けられている。

 米国土安全保障省は1月4日、テロ警戒情報を出した。

「イランや親イラン組織が米国内で活動する意欲や能力を誇示している。米国の関連組織を狙ったサイバー攻撃や反米思想に感化された人物が起こす『ホームグローン(国産)』テロにも警戒せよ」