中国・北京の政府認可カトリック教会でクリスマスミサに参加した信者たち(2019年12月24日、写真:ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国にはもはやクリスマスを祝う自由はなくなったのか。中国のいくつかの都市では民衆にクリスマス祝賀イベントを行わないように要求する通達が出ていることが、複数のメディアによって確認されている。

 中国化が進む香港では、クリスマスイブの夜、デモ隊と警官隊が激しく衝突、催涙弾が撃ち込まれ、「暗黒のクリスマス」となった。中国各地でクリスマス前後のこの時期に起きている“異常”を報告する。

香港史上もっとも「寒い」クリスマス

 クリスマス前の時期、例年の香港ならば大型ショッピングモールはクリスマスプレゼントを買いに来る市民や外国人でにぎわい、クリスマス用の飾りつけとイルミネーションで香港中が飾り立てられる。だが、今年は多くの若者が買い物のためではなく抗議のためにショッピングモールやラグジュアリーホテルに足を運んだ。これに対し、香港警察もショッピングモールの中や周辺でデモ隊を制圧。一部でデモ隊が雨傘などを投げて抵抗すると、警官側も容赦なく警棒を振るい、一時は銃を構えるそぶりを見せた。

 またペニンシュラホテルなど高級ホテルが立ち並ぶ尖沙咀では、およそ100人がネイザンロードで抗議集会を開き、ショッピングモールにあるスターバックスカフェの展示物を破壊したため、香港警察が催涙弾を発射し制圧した。香港のスターバックスチェーンを所有する美心食品の創業者の娘、アニー・ウーが秋に、女性団体「HKFW」の代表として国連人権委員会に出席し、「香港デモは少数の過激な抗議者が行った組織的計画的暴力行為」と発言して以来、スターバックスは勇武派抗議者たちの破壊活動の対象となっている。

 例年、クリスマスの時期の香港には、大勢の観光客が買い物とイルミネーションを楽しみに来るが、今年(2019年)のクリスマス時期は昨年よりも25%入境者が減った。クリスマスプレゼントの売り上げを示す小売業界の売り上げも、昨年より3~7割減との予測が出ている。通常3万円以上のホテルが7000~8000円に値下げしており、香港史上もっとも「寒い」クリスマスでもあった。

「クリスマスは中国の伝統的祝日ではない」

 一方、中国本土では「クリスマス禁止令」が各地で出ている。

 習近平政権になってから、共産党員が西洋の宗教や習慣による祝祭イベント「洋節」に参加することを禁止する通達が出されていたが、今年は、一部都市の一般市民にも拡大している。