第200回臨時国会の閉会に伴い記者会見した安倍晋三首相(2019年12月9日、写真:ロイター/アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

「党内抗争がない」という危機

 安倍晋三政権が憲政史上最長の在任日数となり、今もそれを更新し続けている。これに公然と反旗を翻す自民党議員はいないのか。かつてなら池田勇人には佐藤栄作がいた。また田中角栄には、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、中曽根康弘など対抗する政治家が存在していた。

 今の自民党はどうだろうか。安倍首相に対抗する政治家が存在しない。

 自民党には7つの派閥がある。衆参所属議員数が多い順に言うと清和政策研究会(会長:細田博之、97人)、志公会(会長:麻生太郎、55人)、平成研究会(会長:竹下亘、54人)、志帥会(会長:二階俊博、47人)、宏池会(会長:岸田文雄、47人)、水月会(会長:石破茂、19人)、近未来政治研究会(会長:石原伸晃、11人)となっている。

 かつては派閥の長は、総理・総裁の座を目指していた。そのための派閥であった。だが今はまったく違う。そもそも安倍首相自身が派閥の長ではない。安倍首相が所属する清和政策研究会の細田会長は、総理の座を目指してはいない。麻生氏、竹下氏、二階氏も同様である。目指しているのは岸田氏、石破氏、石原氏の3人だけである。

 では何のために派閥は存在しているのか。1つは大臣や党の主要役員にありつくためのポスト獲得互助組織としての役割だろう。もう1つは、小選挙区制のもとで党の公認を取り付けるための役割である。いずれにしても党の執行部に対する“ゴマすり集団”と化しているのが現在の自民党派閥である。

 これでは政党としての活力は生まれない。「党内抗争がない」ということこそが、自民党の最大の危機なのではないか。