12月13日、イギリスの総選挙において、ロンドンのアスクブリッジとサウス・ルイスリップ選挙区での勝利を受けてスピーチするジョンソン首相(写真:PA Images/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 12月11日に行われたイギリスの総選挙(下院定数650議席)は、予想通り、ボリス・ジョンソン首相に率いられる保守党が47議席増の365議席と、定数650の過半数を制した。サッチャー首相当時の1987年6月総選挙(357議席)以来の大勝である。労働党は、203議席と59議席も減らした。スコットランド民族党は48議席、自由民主党は11議席を獲得したが、ともにEU残留派である。

 ジョンソン首相にとっては、総選挙で単独過半数を確保し、EUとの間で自らがとりまとめた離脱案に沿って1月末までに離脱を実行するという戦略が成功したのである。

労働党の敗因は「Brexitを争点にできなかったこと」

 労働党の敗因は、党内がEU残留派と独立派に二分されており、いずれにするかを明確にできなかったことにある。

 労働党は、EU離脱問題よりも、国民健康保険制度を守ることを争点に掲げた。EU離脱後に、アメリカとのFTAを締結するために、ジョンソン首相がアメリカに譲歩して医療の民営化をさらに進め、それが医療費の増大をもたらすと批判した。しかし、最大の争点はBrexitであり、その戦略も功を奏さなかったようである。

「とにかく、どのような形であれ、一日も早く決着してほしい」という有権者が、離脱に関する姿勢が曖昧な労働党を忌避して、明確な方針を打ち出した保守党に投票したのである。