(英エコノミスト誌 2019年12月7日号)

南アジアでは、支配者層がありふれた日常を無視すると、ただでは済まない。
どういうことか知りたければ、タマネギのことを尋ねてみればいい。この秋には、あのありきたりの球根が大物たちに揺さぶりをかけている。
トラブルの始まりは、インドの北部と中部に広がるタマネギの一大産地が干ばつに見舞われた後、季節外れの豪雨に襲われたことだった。
畑がほとんど壊滅したうえに、備蓄されていたタマネギの3分の1超が水に浸かり、腐ってしまった。
このためインド全域で深刻なタマネギ不足が生じ、その結果、価格が3倍超に高騰した。
飢饉に至る恐れはほとんどない。数十年前の「緑の革命」で麦やコメの収量が大幅に増えてからは、そういう心配はなくなった。
しかし、タマネギ抜きのインド料理を思い浮かべることは難しい。何と言っても、カレーやビリヤニのベースになる野菜だ。
インドでは、貧しくてほかに食べるものがない人でも、少なくともチャパティの1枚や2枚、そしてタマネギ1個は持っている。
タマネギ危機はインド北部の農民と都市に住む消費者の両方に打撃を与えた。