韓国・釜山で開催された「韓・ASEAN特別首脳会議」の夕食会で、出席者を歓待する文在寅大統領(2019年11月25日、写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 東南アジアの会合に、文在寅(ムン・ジェイン)大統領のスピーチがこだましていた。11月25日、韓国・釜山で開かれた「韓・ASEAN(アセアン=東南アジア諸国連合)特別首脳会議」の初日、「韓・ASEAN文化革新フォーラム」での一幕だ。「文化協力を通じた共存共栄へ意欲を示した」という同日付の聯合ニュースの報道からもわかるように、なかなか積極的なアピールが展開された。

 もともとこの首脳会議は韓国とASEANの外交的・経済的交流を深めるためのもので、そのなかで特に文化産業交流に絞り込んだ会合がこの文化革新フォーラムだった。その席上で文大統領は、現在の韓国は文化コンテンツ力で世界7位であり、ASEANと協力してグローバル市場を模索したいと訴えた。また、韓国文化コンテンツが世界に名を轟かせる起爆剤になったのも、そもそもが東南アジアでの人気であったとした上で、今後は韓国がASEANの映画をはじめとする芸能産業をサポートし、文化芸術に関する青少年教育を拡大する方針であることを明かした。

国家政策として進めてきた文化交流

 韓国のASEAN政策の中で、文化コンテンツ産業の推進は重要な役割を果たしている。文大統領がスピーチで語った「KカルチャーからASEANカルチャーとして、世界に向けて共に歩もう」というキャッチフレーズにも似た言葉が、当日から翌日にかけて韓国メディアを賑わせたこともそれを物語る。

 また、スピーチの中でも紹介されたように、韓国南西部の中心都市である光州には、廬武鉉政権の公約で建てられた「国立アジア文化殿堂」という巨大施設がある。私もこの施設の活動にタッチしたことがあるのだが、ここではその名のとおり、日本、中国、東南アジアをはじめとするアジア各国の芸術交流のハブとなっていて、現代的な美術やパフォーマンスのアーティストやキュレーターなどがアジア各国から集まっている。

 光州の文化殿堂を筆頭に、韓国では芸術をはじめとする文化交流が国家政策としてかなりの規模で進められてきた。文大統領がスピーチのなかでその推進力として挙げたのが、1990年代に始められた「韓流」である。