(写真:ZUMA Press/アフロ)

 将来性の高いスタートアップをいち早く見抜くベンチャー投資家として世界的に知られる存在となったソフトバンクグループの孫正義社長——。だが、投資先の1つであるシェアオフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーで、ずさんな経営実態が明らかになると、欧米で孫氏の「目利き力」を疑う声が急速に高まっている。9月にウィーワークのCEOを辞任してはいるが、一夜にして孫氏の名声を奪うことになった同社の創業者アダム・ニューマン氏とはどんな人物なのであろうか。

創業者ニューマン氏のカリスマ性と奇行

 米ニューヨーク・タイムズ紙は、ウィーの初期社員たちが57階の改装中ビルのエレベーターホールの縁に立ち、ビールを飲み交わす約6年前のエピソードを紹介している。アルコールが回り、少しでもふらついて足を踏み外せば死にかねない場面だ。しかも、ニューマン氏が古い飲みかけのビール瓶を見つけると、瓶のなかに残っていた気の抜けたビールをみんなで回し飲みしたという。当時の参加者の1人は、「儀式のようだった。それほど、ニューマン氏にはカリスマ性があった」と語っている。

 ニューマン氏(40歳)は、イスラエル出身。幼いころに両親が離婚し、母親とともに米国に渡った。教育の大半は米国で受けているため、英語は流ちょうだ。米ニューヨーク市立大でビジネスを専攻し、弁も立つ。妹はモデルというだけあって、ニューマン氏自身も195センチの長身。緩やかなウェーブヘアをたたえた姿は、独特の存在感を醸し出している。孫氏は、「アリババ集団の創業者ジャック・マー氏以来のものを感じる」と入れ込んでいたとされる。

 ただ、ニューマン氏には社員が眉をひそめるような行動も多かった。社内を裸足で歩き回り、デスクに飛び乗ったり、社員を怒鳴り散らしたり。お気に入りは、1本1万5000円は下らないテキーラで、切らすとニューマン氏の機嫌が悪くなるため、社員はケース買いで常備していたという。パーティーでは、社員やゲストにマリファナを薦めることもあった。ちなみに、裸足なのは社内だけではないようで、ネット上ではニューマン氏がニューヨークの街中を裸足で闊歩する写真が出回っている。