(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年11月13日付)

10月18日、香港で火炎瓶を片手に抗議活動をする若者(写真:ロイター/アフロ)

 香港の高等学校の標準的なカリキュラムには、社会の崩壊をテーマに書かれたウィリアム・ゴールディングの古典的小説「蝿の王」が組み込まれている。

 しかし今日、世界で最も洗練されたこの都市の住民は全員、文明と呼ばれるものの脆さを現実世界の授業で目の当たりにしている。

 この地域全体が、自分と異なる考え方の持ち主は敵だと見なすトライバリズム(部族主義)と、目を背けたくなるような暴力の手に落ちてしまっているからだ。

 6月初めに始まった抗議行動は11月8日、初めて死者を出した。警察が排除活動を展開していた場所に近い駐車場ビルから、22歳の学生が転落したのだ。

 この死をきっかけに、週末から月曜にかけて暴力の嵐が吹き荒れた。

 11日には、警官がデモの参加者に実弾を発砲する様子が動画に収められ、大規模な暴力的抗議行動によって都市の機能は再びマヒした。

 デモ隊ともみ合いになった男性が可燃性の液体をかけられたうえで火を付けられる恐ろしい事件も起きた。

 今回の混乱で最も厄介なことの一つに、大勢のデモ参加者が覆面警官(あるいは、中国本土から送り込まれたスパイ)ではないかと疑った人々に襲いかかり、めった打ちにする傾向があることが挙げられる。