終戦から70周年を記念して靖国神社で行われた戦没者追悼式(2015年8月15日、写真:ロイター/アフロ)

 第2次安倍内閣を組閣してようやく1年後の平成25年12月26日、安倍晋三首相は公約にも掲げてきた靖国神社に参拝して「内閣総理大臣 安倍晋三」と記帳した。

 これに対し中国が約50カ国の中国大使を動員するなどして安倍首相をヒットラーやハリー・ポッターに登場する闇の帝王に喩えるなどのおどろおどろしい非難を国際社会に訴える形で行った。

 日本も国内問題として全面的に反論、日中は激しく対立し、首脳会談は長い間行われなかった。この時、首相はあと一歩進めて敢然と靖国参拝を恒例化すべきであった。

 どの国も自国の防衛に尽力して貴い命を落とした人物を丁重に扱い国家が慰霊するのは当然である。

 外国を公式訪問する日本の歴代首相は該国の当該施設に献花し慰霊するのを常としているが、日本においては自国の首相が参拝・慰霊することすら、中国の内政干渉で実現していない。

 他方で、「中華民族の偉大な復興」を掲げて登場した習近平国家主席は経済成長で一段と軍備増強を図り、また一帯一路による関係国のインフラ整備をはじめとした開発協力を打ち出して覇権確立の野望を明確にしている。

 しかし、その後、一帯一路に関わる多くの国が「債務の罠」に気づき、また米国でドナルド・トランプ政権が発足すると、対中関税の上乗せや技術競争を窃盗などで優位に進めてきたファーウェイを追い詰めるなどして、中国の覇権を阻止すべく行動をとる。

 この結果、経済成長に陰りが見え覇権志向に疑問符が灯った中国が微笑みかけてきたのが、またしても日本である。

 中国の広大な市場をあてにしてきた日本の財界もこれをチャンスと捉え、首相に圧力をかけたに違いない。

 日中の両首相は多くの財界人を引き連れての相互訪問でいがみ合いに手打ちし、来春には習近平主席を国賓として迎えるという。