外国人経営者が雇用カットする姿勢を批判して、「社員の雇用を切ってよいなら企業の再建は簡単にできる」とうそぶく経営者がいる。

 本当にそうだろうか?

 十数年前に日本企業の米国子会社の社長をしていたころを思い出すと今も胸が苦しくなる。

 私はクリスチャンでもないのに教会に行って、これからクビを言い渡す米国人社員のことをずっと考えていた。よりによって、先日の忘年会でその社員から奥様を紹介され生まれて間もない赤ちゃんと挨拶したばかりだ。

 人事異動の一環で社長になったに過ぎないのだ。こんなひどいことをする羽目になるとは思わなかった。ただ、同僚の我慢は限界に来ていたし、本人への教育的指導も何度か行った。辞めてもらうしかないという判断には自信があった。

 意を決して、「もう来なくてよい」と言い渡した時の彼の悲しそうな顔はいまでも忘れない。「米国人は雇用カットに慣れているから明るいもんだよ」、なんて事情通ぶって言う人がいるが、嘘ばっかりじゃねーか! 「お前はいらない」と言われてショックを受けない人間などいないのだ。表情に出すか、出さずに済ませられるかの違いがあるだけだ。

外資の雇用カットの作法

 時々「私は何百人にクビを言い渡してきた」と誇り、本にまでしてしまう人事経験者がいるが、私には理解できない。雇用カットは必要悪である。できれば避けたい、でも行わなければいけない以上は通すべき筋と流儀がある、というのが多くのグローバルエグゼクティブの本心ではないか。