(英エコノミスト誌 2019年11月9日号)

欧州は「危機に瀕している」というフランス大統領の見立ては正しいのか。
今日の欧州があるのは米国のおかげだ。米国は欧州の地で2度の世界大戦を戦った。
米国の外交は今日の欧州連合(EU)の前身が誕生するのを助けた。米国の軍隊はソビエトの侵攻から西欧を守り、米国の政治家は東西ドイツの統一を差配した。
今、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はすべてのヨーロッパ人に対し、米国が欧州を見放しつつあると、熱のこもった警告を発している。
欧州は「危機に瀕している」、目を覚まさなければ「自分たちの運命をコントロールできなくなるだろう」というのだ。
マクロン氏はエリゼ宮の執務室で、本誌エコノミストの取材に終末観的な言葉づかいで応じた。
大西洋をまたぐ同盟である北大西洋条約機構(NATO)は「脳死」に陥っている、欧州には独自の軍隊が必要だと語った。
EUは自分のことをただの市場にすぎないと考えているが、本当は技術やデータ、気候変動などについて一致した政策を掲げる政治ブロックとして行動する必要があると述べた。
欧州は米国を頼るわけにはいかない、代わりにフランスを頼るべきだと主張するフランス大統領は過去にもいた。マクロン氏はこの見解を単に焼き直しているわけではない。