かつては湿原だった所が治水事業で田んぼとなり、いまは住宅地となっているケースが日本中に多く見られる

 11月5日火曜日の夜9時、私は学生諸君とゼミナールの最中でした。その時、2019年の台風23号が最大風速毎秒60メートルという、今年最強の規模に発達したとの報が齎(もたら)されました。

 この台風は日本列島の南海上を東にそれて行くので、日本列島への影響はほとんどないと言われます。でも、それは胸をなでおろしていい情報なのでしょうか?

 日本はいま、9月の台風15号、10月の19号、21号と、再三にわたって日本列島各地が水害や土砂災害に襲われ続けています。

 もうこれ以上の台風も水害も勘弁してもらわなければと誰もが思うはずです。しかし、23号台風は、いままでの熱帯低気圧が「序章」であって、今年一番の本番はこれからだと言っている。

 現時点ではまず、11月以降に日本列島を異常気象やそれによる災害が襲いかからないことを心から願っています。

 同時に、台風23号の最強規模への急激な発達は、決して予断を許さぬ状況が続いている可能性を示唆しているとも考えられます。

 このコラムではいままで、千葉県や神奈川県の武蔵小杉など、首都圏周辺の被害を中心に検討してきましたが、11月の台風で被害を受けた他の地域を含め「日本の脆弱性」に共通する本質を考えて見たいと思います。

高度成長とベジタリアン将軍

 先に、埼玉県さいたま市、「浦和」がかつて「浦」すなわち海辺であった経緯に触れました。

 海のない「さいたま県」のはずですが、「埼玉」の名に「岬」を含意する「埼」の字があるのはなぜでしょうか。

 実は、埼玉東部の低地の大半は縄文海進時には海、その後も川であり沼であり、つまり、戦国時代あたりまでは人が住めるような立地ではなかった場所が大半だった。

 そうした基本的な事実から確認していきましょう。

 いきなり話が飛ぶようですが、「松尾芭蕉」「近松門左衛門」「井原西鶴」といった文人、あるいは「俵屋宗達」「尾形光琳」「尾形乾山」といった美術家など、江戸時代の日本文化の水準を作った人々が活躍した「元禄」(1688-1707)という時代を考えてみましょう。