11月1日に開かれたIOC、東京都、政府、組織委員会による4者会談の直前、言葉を交わすIOCのジョン・コーツ調整委員長と小池百合子都知事(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 長い五輪の歴史上、これほどシラケそうな予感が漂う大会はないだろう。2020年の東京五輪である。酷暑を回避するため、マラソンと競歩の会場が札幌市に移転することが決まった。マラソンコースとなる舗装道路の暑さ対策など約300億円を投じた東京都は最後まで抵抗したものの、IOC(国際オリンピック委員会)と政府、東京五輪・パラリンピック組織委員会に強引な形で押し切られてしまった。

反対するのが目に見えている東京都を外して根回し

 札幌市への会場変更案は、IOCが〝アスリートファースト〟を突如として訴えたことから端を発した。連日酷暑となったカタールで行われた世界陸上は、少しでも暑さを避けるため女子マラソンのスタートを深夜にしたにも関わらず、出場の4割近い28人が途中棄権。他の競技からも「こんな大会には二度と参加したくない」などといったブーイングが噴出した。この世界陸上での異常事態がIOCをビビらせ、東京五輪開幕まで残り10カ月強に迫っていたにもかかわらず〝ちゃぶ台〟を引っ繰り返してしまったのである。

 しかも信じられないのはIOCが一方的に札幌市への会場変更案を訴えてから、たったの16日で正式決定したことだ。要は最初から〝アスリートファースト〟というよりも〝IOCファースト〟で決まっていたのである。水面下の協議でIOC案を「イエスマン」の政府と組織委員会が飲まされ、逆に反対することが事前に分かっていた東京都は外す形で3者の間で合意していたのだ。この事前協議から東京都がつま弾きにされた背景には小池百合子都知事と大会組織委員会・森喜朗会長の不仲も大きく絡んでいるといわれている。

 この傍若無人な札幌変更案をぶちまけたIOCは自分たちが大会主催者であることをタテに最初からイニシアチブを握り続けていた。競技ごとの開催地に関する変更についても絶対的な権限を持つことからIOCには基本的に誰も逆らえない。政府も大会組織委員会も本音は「なぜ、この段階で札幌なのか」と思っていたとしてもIOCとケンカせずに事を穏便に運んで大会を成功させたいことから、どうしてもNOとは言いにくいのだ。そして、まず間違いなく日本人は昔から「NOと言えない国民性」であることもIOC側は計算に入れていたのだろう。