10月16日、白馬に乗って白頭山に登頂した金正恩・朝鮮労働党委員長(中央)。左は妹の金与正・党中央委員会第1副部長(提供:Korean Central News Agency/ZUMA Press/アフロ)

 10月31日午後4時35分頃、北朝鮮が再び、西部の平安南道順川付近から、日本海へ向けて短距離弾道ミサイル2発を発射した。日本のEEZ(排他的経済水域)の外に落下したとはいえ、今年5月以降、すでに12回目で、計20発以上に上る。

ピンチの安倍政権を救う「北風」

 河野太郎防衛相は、短距離弾道ミサイルの飛距離は、350~400kmで、高度は約100kmだったと述べた。また韓国軍合同参謀本部は、飛距離は最大約370km、高度は約90kmだったと説明した。

 一方、11月1日付の朝鮮労働党中央委員会機関紙『労働新聞』は、「超大型ロケット砲の発射実験に成功した」と報じた。

 31日、安倍晋三首相は北朝鮮のミサイル発射を受け、直ちにNSC(国家安全保障会議)の4大臣会合(首相、官房長官、外相、防衛相)を招集し、15分ほど対応を協議。その後記者団に、北朝鮮に対する非難を述べた。

「北朝鮮が短距離弾道ミサイルと判断されるものを発射しました。わが国と地域の平和と安全を脅かすものであり、強く非難いたします。政府としては、わが国の排他的経済水域の外に落下したと確認していますが、今年に入って20発を超える発射が繰り返され、その目的がミサイル技術の向上にあることは明らかであります。

 政府としては、これまで以上に安全保障上の警戒監視を強める必要があります。米国、韓国をはじめ関係国と緊密に連携しながら、国民の生命、そして平和な暮らしを断固として守りぬいていく決意であります」

 同日深夜に、ある政府関係者に聞くと、こう述べた。

「また『北風』が吹いてくれた。まさに困った時の『北風』だ。安倍総理は、まだ運を持っているよ」

「北風」とは、北朝鮮のミサイル発射や核実験などを意味する隠語である。そもそもは、韓国で使われていた言葉だ。