サウジアラビアを訪問したロシアのプーチン大統領と会談したムハンマド皇太子(2019年10月14日撮影、写真:代表撮影/Russian Look/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所 上席研究員)

 相場が大きく上昇してもその後すぐに元の水準に戻ってしまうことを市場関係者は「行って来い」と表現するが、最近の原油価格はまさにこの表現がぴったりである。

 9月14日にサウジアラビアの石油施設への大規模攻撃があったにもかかわらず、米WTI原油先物価格は1バレル=50ドル台半ばで推移している。

 世界経済の減速懸念が重しとなり、市場関係者のセンチメントが悪化しているためだが、実際の需給面の動きはどうなっているか見てみたい。

原油需要低迷で1バレル35ドルの憶測も

 まず供給面だが、OPECと非加盟主要産油国で構成する「OPECプラス」は来年(2020年)3月まで日量120万バレルの減産を実施しており、直近の遵守率は136%と堅調である。

 ロシアのプーチン大統領は10月14日にサウジアラビアを訪問し、エネルギー分野を中心とする経済協力関係の強化で合意した。OPECプラスの枠組みを支えるロシアとサウジアラビアの関係は良好である。

 一方、OPECプラスにとって「頭痛の種」となっている米国の直近の原油生産量は、日量1260万バレルと過去最高を維持している。米エネルギー省によれば、今年の原油生産量は前年比127万バレル増の日量1226万バレルになる見込みだ。

 ただし、将来の原油生産を左右する石油掘削装置(リグ)の稼働数は低迷が続いている。また、米国の原油生産を牽引するシェールオイルの11月の生産量は過去最高の日量897万バレルとなるものの、前月比0.6%増とほぼ横ばいである。シェールオイルの主要生産地であるパーミアン鉱区ではここ数年の乱獲の反動が顕著になりつつあり(10月8日付OILPRICE)、ゴールドマンサックスは10月20日、「来年のシェールオイルの生産の伸びは今年に比べて大幅に鈍化する」との予想を示した。ロシアでも「シェールオイルの生産は近いうちに頭打ちになる」との見方が出ている(10月22日付OILPRICE)。来年以降は、この傾向が顕著になるだろう。