ノーベル化学賞を受賞したジョン・グッドイナフ米テキサス大学教授(写真:AP/アフロ)

 前回は、リチウムが地上に存在する核種の中で最も軽い「究極の軽金属」で、これを適切に利用できれば素晴らしく高エネルギー密度の電池が作れること、

 しかし、リチウムを含むアルカリ金属は反応性に富み、不安定で爆発などを起こしやすいこと、

 そのような発火や爆発を防いで、どのようにして安全、軽量、小型でサステナブルな「反復利用可能な蓄電池」2次電池が実現可能か、

 という問題設定の確認に1回分の連載を充てました。理由は簡単で、中学高校生に興味を持ってほしいからです。

 一般のメディアはよくも悪しくも大人対象に「儲かる」みたいな話と、子供向けには「ろうそくの化学」が愛読書みたいなお話が大半になる傾向があります。

 そのどちらもカバーしていないのが「サイエンスの本質をこれから未来を担う中学高校生に教える」部分と思います。今回はやや禁じ手を含めて書いてみようと思います。

 私が育ててもらった私立M中学校高等学校という教育機関は、まさにそういう教育を徹底するところで、その基本は「原体験」と「ほったらかし」にありました。

「アルカリ金属」は危険と100回言うより、危ない現場を見せた方が早い。読者の中には高校の化学で金属ナトリウムを見せてもらったことがある方もいると思います。

 こんな動画(https://www.youtube.com/watch?v=TtPUIVsIGu4)がありました。

 金属ナトリウムは大変危険です。金属リチウムは、もっと「やばい」のです。それを制御したのが今回のノーベル賞になりますが、ここは教育的に、順番に進めましょう。