(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年10月16日号)

いまやイタリアですら30年間の借金を金利2%で借りられる(写真はベネチア)

「Don’t do stupid shit(クソみたいなことはしない)」

 この表現は、最後の単語が「stuff(もの、こと)」という穏当なものに変えられたうえで、「ばかげたことはするな」という意味の「オバマ・ドクトリン」として知られるようになった。

 前任の大統領が進めた無益なイラク戦争からバラク・オバマ氏が学んだ教訓を反映した言葉だった。

 多くの人はこのドクトリンを敗北主義的だと受け止めた。今日、筆者にはその良さが分かる。

 あまたあるこの世の困難に対して理知的な行動を取ることができれば大変素晴らしいだろうが、それでも今は、このオバマ・ドクトリンを適用することが一つの救いになる。

 このことが特によく当てはまるのが世界経済だ。

 国際通貨基金(IMF)の専務理事に新たに就任したクリスタリナ・ゲオルギエバ氏が、米ワシントンでの年次総会に先立つ会見で述べたように、「2019年は世界全体の90%近くで経済成長の鈍化が予想される。グローバル経済は現在、同時進行の減速過程にある」。

 米ブルッキングス研究所と本紙フィナンシャル・タイムズが行った合同調査はさらに悲観的で、現状を「景気の同時停滞」と形容している。

 産業と貿易の分野で特に明確になっているこの減速の主因は何なのか。その答えの大きな部分は、不確実性の高まりに求められるようだ。