全国戦没者追悼式での天皇、皇后両陛下(2019年8月15日、写真:AP/アフロ)

(佐藤 けんいち:著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表)

 本日(2019年10月22日)は、「即位礼正殿の儀」で国民の祝日である。めでたいことである。ただし、祝日となるのは今年限りのことだ。

「即位の礼」は、10月22日から31日まで国の儀式として行われ、儀式には180余りの国や地域、国際機関の元首や王族、政府高官など約400人が参列する。天皇即位の内外に向けてのお披露目であり、まさに一世一代の大祝賀会でもある。これにともなって恩赦も実行される。

変化しつつ連続性を保ってきた天皇制

 前回の「即位礼正殿の儀」(1990年)から、今年はちょうど30年目ということになる。30年を1世代とすれば、ちょうどよい区切りとなるのかもしれないが、もう少し長いスパンに広げて考えてみたいものだ。今年2019年は、明治維新革命から151周年である。昨年の「明治150年」はいまひとつ盛り上がりに欠けていたが、歴史の区切りとしては意識しておいたほうがいい。なぜなら、151年前にはある種の歴史の「断絶」が生じているからだ。

 天皇をめぐる制度もまた同様である。今上天皇、すなわち徳仁(なるひと)親王で、明治維新以降では5人目の天皇となるわけだが、歴史学では明治天皇以降の制度を「近代天皇制」と呼んで、それ以前の制度とは区別している。「復古革命」という性格をもつ明治維新体制は、同時に弱肉強食の過酷な国際社会で生き残るために「近代化」を至上命題としており、天皇をめぐる制度も「近代化」されたのである。

 なんども断絶の危機を迎えたものの、きわめて長期にわたって生き延びてきたのが天皇という制度であり、天皇家である。今上天皇(=徳仁親王)で公式には第126代とされ、現時点では世界最古といっていいだろう。ただし、神話時代に踏み込んでいるため、歴史的にどこまでさかのぼれるかは定かではない。

 天皇家は古代以来「連続」しているが、天皇のあり方自体は大きく「変化」している。今年4月30日に行われた「譲位」(=生前退位)によって、「近代以後」に向けて、さらに変革が行われている。時代の変化に対応して生き延びてきたのだ。

「天皇」が制度として、断絶を超えて連続性を保ってきた秘密はどこにあるのだろうか?

 長く続いてきた制度には、126代続いてきた天皇以外の代表例として、カトリック教会のローマ教皇や、チベット仏教のダライ・ラマをあげることができるだろう。現在のローマ教皇は266代目であり、ダライ・ラマは14代目だ。ともに宗教指導者にかかわる制度だが、日本の天皇も、神を祀るという点において宗教と密接な関係がある。

 今回は、天皇以外の制度と比較しながら、日本の天皇の特質について、さまざまな点から考えてみたいと思う。どの要素を取り上げるかによって、見える姿が異なってくるが、制度を比較することで、さまざまなことが見えてくることだろう。