加害者にとっては一瞬の快楽であっても、被害者の悪夢は一生続く。声をあげることもままならず、泣き寝入りする被害者も多い性犯罪。治療プログラムを開発し、犯罪者と日々向き合い続ける犯罪心理学者の原田隆之氏が、その実態にせまる。後編/全2回。(JBpress)

(※)本稿は『痴漢外来』(原田隆之著、ちくま新書)より一部抜粋・再編集したものです。

(前編)刑罰だけでは繰り返す!痴漢は深刻な「病」である
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57963

加害者の一瞬、被害者の一生

 サチコさんは、仕事帰りに見知らぬ男2人組に襲われ、車のなかでレイプされた。

 被害を受けてすぐに警察に届けたが、病院でのケアや警察署での取り調べは深夜にまで及び、家に帰ることができたのは深夜3時を過ぎていた。

 そのあとも朝まで一睡もできなかったが、翌朝はいつも通り仕事に行ったという。卑劣な性暴力によって、自分自身や自分の人生がゆがめられてたまるものかという悲痛な思いがそこにあった。

 とはいえ、彼女の傷が浅かったというわけではない。しばらくは無理を続けることができたが、やがてそれは破綻し、その後何年にもわたってPTSD症状に悩まされ続けることになる。