(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年10月4日付)

ホワイトハウス

 ドナルド・トランプ米大統領がよく、実は自分が犯している罪を、他人がやっていると非難することは広く認識されている。

 心理学ではこれを「投影」と呼ぶ。

 最もよく見られる例は「フェイクニュース」だ。トランプ氏は自分でフェイクニュースを作り出す一方で、それと同じくらい頻繁に、他者の指摘をフェイクニュースだとこき下ろす。

 自分の非を他人に投影する傾向は、自己防衛の形態の一つに数えられる。自分はうそつきや詐欺師に囲まれていると思う方が、その逆よりも気持ちが落ち着くものだ。

 合衆国憲法のいう「重罪や軽罪」を犯したとして弾劾に直面している米国大統領には、この点が特によく当てはまる。

 トランプ氏は、民主党や「ディープステート(国家内国家)」が自分を大統領の座から引きずり下ろすクーデターを仕かけていると主張している。

 この主張ではクーデターの意味がひっくり返されている。クーデターとは、違法な手段で政府の転覆を図ることであり、通常は暴力を伴う。

 トランプ氏はそんな脅威には直面していない。弾劾を行う権利は、合衆国憲法に書き込まれている。弾劾とは、どんな結果が出るのか定かでないまま、段階を踏んで行われるプロセスなのだ。