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「18nmのDRAM」には18nmがあるか?

 前回、「『7nmの半導体』に7nmの箇所はどこにもなかった 半導体のプロセスルールとは一体何か?」(2019年9月6日)という記事(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57517)を書いたところ、「そんなことになっていたのか!」と大きな反響があった(注:nm=ナノメートル、10億分の1メートル)。

 その上で多くの読者から、「インテルのプロセッサやTSMCが製造するSOC(System on Chip)などのロジック半導体のプロセスルールが“商品名”のようなものだということは分かった。では、1X(18nm)とか、1Y(17nm)とか、1Z(16nm)などと言っているDRAMも、そのような寸法はどこにもないのか?」という質問を受けた。

 そこで本稿では、「○○nm」と称するDRAMにその寸法があるかどうかを論じたい。

 答えを先に言ってしまうと、「“18nmのDRAM”には18nmがある」のである。もちろん、“17nmのDRAM”には17nmがあり、“16nmのDRAM”には16nmがある。それでは、その○○nmとは、どこの寸法を指しているのか?

 さらに、2019年後半の現在、最先端のDRAMは、1X(18nm)から1Y(17nm)に移行しつつある。そして2019年末には1Z(16nm)が量産される見込みである。つまり、DRAMは1nm刻みで微細化していくわけだが、DRAMメーカーが“1nmの微細化”にこだわるのはなぜなのか? その理由を論じたい。

 これも結論を先に言ってしまうと、1nmの微細化に出遅れた場合、年間の売上高で1兆円規模の差がついてしまうことによる。

 では、まず、DRAMの構造とその変遷について説明する。

DRAMの構造とその変遷

 DRAMは1個のトランジスタと1個のキャパシタから構成されている(図1)。トランジスタがオンになると、キャパシタに電荷が蓄えられる。つまり、キャパシタに電荷があるかないかで、「1」か「0」かのメモリ動作を行うわけだ。

図1 DRAM構造の変遷
出所:「日本半導体歴史館」(http://www.shmj.or.jp/museum2010/exhibi428.htm )