(英エコノミスト誌 2019年9月28日号)

演説を終えたドナルド・トランプ大統領に拍手を送るマイク・ペンス副大統領。隣がナンシー・ペロシ下院議長(2019年2月5日、写真:ロイター/アフロ)

ナンシー・ペロシ下院議長がドナルド・トランプ大統領の弾劾調査に乗り出した。手放しで喜べる動きではない。

 米国はもう少しで大統領のいない国になるところだった。

 1787年開催の憲法制定会議に集まった人々は、君主制を恐れていた。ジョージ・ワシントンのような偉人がいなかったら、若い国は議会制度を導入していたかもしれない。

 だが、大統領府を設けたことから、建国の父たちは権力を濫用する大統領を解任する仕組みを作らなければならなかった。誰もがワシントンのような立派な人物だとは限らないからだ。

 そうして出来上がったのが、弾劾の可否を下院の投票で決し、可となれば上院で弾劾裁判を行う仕組みだ。

 大統領は具体的に何をすると弾劾されるのかという問題――合衆国憲法には「反逆罪、収賄罪またはその他の重罪および軽罪」と記されている――は、意図的に議会に委ねられた。

 したがって、弾劾は憲法の規定ではあるが政治的な運動でもある。

 今回の運動は、ナンシー・ペロシ氏が9月下旬、民主党の下院議員らに対し、ドナルド・トランプ大統領の弾劾に向けた聴聞を始めるよう命じたことで本格的にスタートした。

 これがそのまま弾劾につながるとは限らない。ただ、弾劾の聴聞が始まると自ずと勢いがつくという展開が過去には見られる。