破壊された地下鉄の駅のガラス手すり(筆者撮影、以下同)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 週末に行われるデモを取材しに、香港を訪れた。9月15日、日曜日のデモは、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が逃亡犯条例改正案の正式撤回を宣言したにもかかわらず、過激化した。

 香港政府庁舎前のデモ隊と警官隊の火炎瓶と催涙弾の応酬は、ちょっとした「戦闘」モードだったし、金鐘の地下鉄のガラス手すりはぶち壊されるし、湾仔の地下鉄駅に火炎瓶は投げ込まれるし、そんな映像がネットにばんばん挙げられたのを見た人は、ここまでやる必要があるのか、と日本人なら鼻白む人も少なくないと思う。私自身、香港の友人から3Mのフルフェイス防毒マスクとヘルメットを渡されて、デモ隊の現場に行くなら、これが最低装備です、と言われて、そんな大げさな、と思っていた。だが、実際、最前線からはかなり遠くにいたのにもかかわらず、催涙弾の強烈なガスは漂ってきて、確かにガスマスクがなかったらえらいことになっていたと、近くのガスマスクをしていない人が悶え苦しむ姿を見て、友人に感謝した。防毒マスクをしていても、髪の毛を伝って隙間からマスク内にしみこむガス成分だけで、顔がひりひりした。

友人から受け取った“とりあえず”のプレス用の装備、防毒マスクとヘルメット(その後、より安全な3Mのフルフェイス防毒マスクを調達してきてくれた)

 6月9日の103万人大規模デモから100日目。9月15日のデモは、平和デモ自体の参加人数は10万人弱であったが、一部の勇武派(暴力的行動をとるデモ隊。これに対して非暴力、平和的、合理的デモを掲げる平和デモ隊がある)の行動はいつにもまして過激で、6月や7月にはここまで暴力的になるとは想像もつかなかった。

 しかも、この若者たちの過激な行動に対して、良識ある大人、たとえば学校の教師や実業家や教会関係者のような人たちも肯定、もしくは容認していることも驚きだった。香港人には暴力が嫌いな人が多いと思っていたのだが。なぜ、ここまで過激になるのか、香港デモはどこまでいくつもりなのか。催涙弾の飛び交う現場で考えてみた。

マスクをして催涙ガスに備えるデモ隊