暴漢に襲われ片目を失明したインドネシアの汚職撲滅委員会(KPK)の捜査官ノフェル・パスウェダン氏(左)。握手しているのは、今年1月、自宅に火炎瓶を投げ込まれたKPKのラオデ・シャリフ副議長(2018年2月22日撮影。写真:AP/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚 智彦)

 インドネシアには「最強の捜査機関」と称される組織が2つ存在する。それは警察でも検察でもなく、「麻薬委員会(BNN)」と「汚職撲滅委員会(KPK)」だ。いずれも国家委員会であり独立した国の捜査組織である。それぞれ麻薬犯罪、汚職犯罪の摘発を精力的に続けており、国民から厚い信頼を寄せられている。

 というのも、1998年に崩壊したスハルト長期独裁政権下での悪弊である「汚職・癒着・親族主義(KKN)」の根絶こそが、インドネシアが民主国家として歩み始めて以来の最大の国家的課題であり、かつ現在も各界に汚職が蔓延しているからだ。

「最強の捜査機関」の手足を縛る法改正

 その「最強の捜査機関」の1つ、汚職摘発を担うKPKの捜査は、日本の検察の「秋霜烈日」にも匹敵すると言われるほど、情け容赦なく、閣僚、国会議員、司法関係者などの権力者も次々と摘発し、国民からの喝采を浴びる「正義の組織」だ。

 ところが、そのKPKが今、大きく揺らいでいる。摘発される対象者に国会議員や地方公共団体の首長、政党党首、公営企業や銀行のトップといった「VIP」が多く含まれていることから、国会で「汚職撲滅法改正案」が審議されるようになり、9月17日、ついに賛成多数で可決されてしまったのだ。

 国会はすでにKPK幹部人事にも関与し、南スマトラ州警察本部長のフィルリ・バフリ氏をKPKトップの新委員長に任命している。

 KPK関係者らによると、フィルリ氏はこれまでにKPKによる汚職捜査の容疑者となった州知事らと非公式に接触するなど倫理規定違反の疑いが持たれており、「KPK委員長として不適格」との指摘がなされている。