(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年9月13日付)

3年半ぶりの利下げと量的緩和を発表したマリオ・ドラギECB総裁(写真:ロイター/アフロ)

 9月6~8日の日程で、イタリアのコンサルティング会社アンブロセッティ主催のビジネスフォーラムに出席するために、欧州の政策立案者が風光明媚なコモ湖のほとりに集まった。筆者はここで3つの話を耳にした。

 まず、ユーロ圏の景気下降は景気後退の前兆に危険なほどよく似ている。

 次に、欧州中央銀行(ECB)による金融緩和は極めて重要な対策だが、それでは不十分だ。

 そして、ドイツは手遅れになるまで、大規模な財政刺激策を講じるのを待つ――。

 英国の欧州連合(EU)離脱は、景気の雲行きが怪しいだけに歓迎されないものの、余興の扱いだった。

 退任が近づいているマリオ・ドラギECB総裁はすでに、偉大なヨーロッパ人の殿堂入りを果たしている。金融政策のルールの作り替えもいとわない同氏の姿勢が、2008年の金融危機後にユーロの命を救った。

 もしユーロが崩壊していたら、第2次世界大戦後の欧州統合の構造の大半も道連れになっていただろう。危機の前に立ちすくんでしまった各国の政治家たちは、ドラギ氏に感謝することがたくさんある。

 ドラギ氏の戦略は、2012年夏に語ったワンセンテンスに凝縮されていた。