(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年9月10日付)

日本の安倍晋三首相とドナルド・トランプ米大統領のホワイトハウスでの会談を前に談笑するジョン・ボルトン大統領補佐官(右)とマイク・ポンペオ国務長官(2018年6月7日、写真:ロイター/アフロ)

 数カ月前、ドナルド・トランプ米大統領はアイルランドのレオ・バラッカー首相をオーバルオフィス(大統領執務室)に迎えた。

 そして口ひげをはやした国家安全保障担当補佐官の方を向き、こう言った。「ジョン、アイルランドは君が侵略したい国の一つだったかな?」。ジョークが誘った笑いには、明らかに無理があった。

 ジョン・ボルトン大統領補佐官の解任――あるいは、誰を信じるかによっては辞任――は、トランプ政権から最大のタカ派を取り除く。

 また、大統領が長らく望み、ボルトン氏が激しく抵抗してきたイランとの交渉開始への道も開けてくる。

 10日に世界平和の見込みが著しく高まったと言っても、大した過言ではないだろう。

 トランプ氏は好んで、側近らに向かって「ジョンが決めていたら、我々は今頃、4つの戦争を抱えていた」と言っていた。

 ボルトン氏が排除されたことで、トランプ氏は政権内部から非難されずにあり得ないようなディール(取引)を好きに追求できるようになる。

 こうしたディールには恐らく、トランプ氏が前回、6月に板門店の38度線上で会った北朝鮮の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)氏との協議再開に向けた新たな努力が含まれるだろう。

 意味深なことに、ボルトン氏は当時、モンゴルの首都ウランバートルに立ち寄っていた。