(英エコノミスト誌 2019年9月7日号)

シリアの東グータで政府軍を激励するアサド大統領(2018年3月18日、SANA/ロイター/アフロ)

バシャル・アル・アサドが反体制派の最後の砦、イドリブ県の奪回に王手をかけている。しかし、彼がシリア内外にもたらした混沌に終止符が打たれるわけではない。

「アサドもしくは我々がこの国を焼き払う」

 バシャル・アサド氏の軍隊は何年も前から、奪い返した街の壁にこんなフレーズを書き殴っている。

 反体制派は独裁者を打倒寸前まで追い詰めた。しかし、アサド氏は西側首脳のこけおどしを無視し、イランとロシアの支援を得た。

 例のフレーズそのままに、アサド氏は都市を丸ごと破壊し、毒ガスを撒き、自国民を飢えさせた。

 イドリブ県には、わずかに残った反体制派が身を隠している。ここも程なく陥落するだろう。数々の不利な条件にもかかわらず、怪物が勝利を収めたのだ。

 しかし、これは空虚な勝利だ。

 ロシアやイランが言うようにこの国に秩序をもたらすどころか、アサド氏は人口の半分を故郷から追い出した。

 8年間の内戦によって経済は破壊され、50万人が命を落とした。アサド氏が国民に提供できるものは何一つない。