高砂の尉と姥。日本のベテランの夫婦のひとつのイメージ(wikipediaより)

 混沌とした社会に振り回され、理想と現実の落差に苦悩を抱く夫婦。夫婦崩壊を回避するためには、どうすれば良いのか。近畿大学教授でジャーナリストの奥田祥子氏が、長期にわたる取材を重ね、夫婦の実態に迫った。(JBpress)

(※)本稿は『夫婦幻想』(奥田祥子著、ちくま新書)より一部抜粋・再編集したものです。

ネガティブな夫婦の形

 取材対象者の多くが口にした言葉からは、目の前の現実から目を背け、「幻想」の中だけにしか夫婦像を描けない男女の悲哀を感じずにはいられなかった。と同時に、苦悩し、憤りながら、それでもなお、夫婦にかけがえのない関係性を求め続ける人間の性(さが)に、私は幾度となく激しく心揺さぶられたのである。

 古くは「家庭内離婚」「濡れ落ち葉」「くれない族」から、「熟年離婚」「卒婚」「鬼嫁」まで、夫婦をめぐる問題や現象、新たな形態などをまるでキャッチコピーのように面白おかしく表現した言葉は、いつの時代にも事欠かない。それほどまでに「夫婦」は常に耳目を集めてきたといえるだろう。大半がネガティブに捉えた概念でありながらも。