神奈川県横須賀市の馬堀海岸。横須賀は深刻な人口減少に直面している

 横浜に衝撃が走った。8月22日、林文子・神奈川県横浜市長がIR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致を表明したのだ。就任当初は「白紙」としていた林市長だが、「将来への危機感」から態度を一転。人口減に伴う税収減への対策としてIR誘致の決断を下した。これにカジノの弊害を訴える市民団体などが猛反発し、激しい議論が沸き起こっている。

 IR誘致の是非はここでは問わない。だが林市長の決断が、ある事実を浮き彫りにしたことは確かだ。それは横浜市でさえも今後、人口が減少し、財政危機に陥る可能性があるということだ。地方衰退が叫ばれて久しいが、約370万人の人口を擁する大都市・横浜もその流れから逃れられない(横浜市では2019年が人口のピークと推計している)。

 規模の小さな他の地方都市にとって事態はさらに深刻だ。すでに多くの自治体が人口減と高齢化、税収不足、財源不足に直面し、苦境にあえいでいる。

 地方自治体は財源や人材が不足するなかで、福祉・医療体制の確保、インフラ整備、空き家・空地対策、災害対策などさまざまな課題に対応しなければならない。「そうした課題を乗り越えるために、もはや自治体の力だけでは限界がある」と唱え、官民連携の支援・推進に取り組む人物がいる。前横須賀市長で、現在はGGR(Glocal Government Relationz)代表取締役の吉田雄人氏である。

 吉田氏は横須賀市議会議員を6年、横須賀市長を8年(2009~2017年)務めた。議員および首長として横須賀市の課題解決に取り組むなかで、官民連携には地方行政の効率化と地域活性化を実現する大きな可能性があること、そして一方で高いハードルが立ちふさがっていることを痛感したという。

「民間のサービスやソリューションの中には、地域の課題解決につながるイノベーションが数多く眠っています。しかし、官民の間には曇りガラスのような垣根が存在していて、それを生かすことができません。今こそ官民を隔てる垣根を壊す取り組みが重要です」(吉田氏)

 現在、吉田氏は、企業向けのコンサルティングなどを通して、行政と民間の間を課題解決という目的でつなぐ「GR(ガバメント・リレーションズ)」の構築に取り組んでいる。また来る9月23日には、「地域課題解決への戦略的官民連携」を目指すためのイベント「第1回 日本GRサミット」を主催する(JBpressもメディアパートナーとして本イベントに協力している)。

 官民連携にはどのようなハードルがあるのか、乗り越えるために何が必要なのか、吉田氏に話を聞いた。

前横須賀市長、GGR(Glocal Government Relationz)代表取締役の吉田雄人氏