ソウルで行われた反日デモ(2019年8月24日撮影、写真:Lee Jae-Won/アフロ)

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 日本と韓国の紛争は、ますますエスカレートしてきた。週刊ポストは「韓国なんて要らない」という特集を組み、月刊誌『WiLL』は「さようなら、韓国!」、Hanadaは「NO韓国――絶縁宣言」という特集を組んでいる。気分はすっかり国交断絶モードだ。

 この根底には韓国の根強い反日感情と、それに対する日本人の拒否感がある。これを「千年恨」などと呼び、あたかも日韓の対立は宿命であるかのようにいう人もいるが、反日はそれほど根深い感情ではない。それは政治が作り出したものなのだ。

1990年代に激増した「歴史問題」

 1980年代まで、日本と韓国の関係はそれほど悪くなかった。韓国は軍事政権の途上国であり、韓国に「歴史問題」で謝罪するなどという発想はまったくなかった。それは新聞記事のデータベースを見てもわかる。

 次の表は『朝鮮日報』に出てきた記事の数を、年代順に拾ったものだ(木村幹『日韓歴史認識問題とは何か』)。「強制連行」や「慰安婦」が出てくるのは1990年代からで、「親日派」という言葉も同じ時期に激増している。

『朝鮮日報』に出てくる歴史問題の記事の数

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57549

 90年代に最初に出てきたのは強制連行だった。これは朝鮮大学校の教師が『朝鮮人強制連行の記録』という本で作った造語で、戦前から100万人以上の朝鮮人が官憲に連行されて日本で強制労働させられたという。

 この数字は誇大で、未払い賃金などは1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決した」と明記されていたので、強制連行の問題はそれほど盛り上がらなかった。

 私は1991年夏に、NHKで韓国にも取材したが、強制連行されたという証言は得られなかった。募集で内地に出稼ぎに行き、タコ部屋で働かされたという証言はたくさんあったが、 軍に連行されたという話はまったく出なかった。